発進時「キーッ」という高い音。
アクセルを開けると回転は上がるのに、ワンテンポ遅れて動き出す。
クラッチが滑っているような、嫌な感触。
原付きスクーターに乗っていて、こんな症状に心当たりはありませんか?
私自身、配達で毎日アドレス110を使う中、発進時の異音と違和感を体感。
「クラッチシューの摩耗かな…」
部品を発注し、クラッチシューの交換を行うことにしました。
アドレス110のクラッチシュー交換は、過去に2度おこなっています。
ただ、今回の作業で痛感したのは、部品選びを間違えると簡単には終わらないという現実でした。
この記事では、アドレス110(CE47A)のクラッチシュー交換手順を解説。
それと同時に、社外品クラッチシューを使用した結果、明らかに不具合があり加工が必要になった実体験をお伝えしています。
アドレス110(CE47A)のクラッチシュー交換時期の目安
「スクーターのクラッチシューって、いつ交換すればいいの?」
明確な交換距離が決まっているわけではないため、不安になりやすいポイント。
ここでは、私が配達でアドレス110(CE47A)を10万キロ以上乗ってきた経験をもとに、クラッチシュー交換・点検の目安を整理していきます。
走行距離の目安と点検タイミング
私は、Vベルトの交換目安を20,000km前後としているので、そのタイミングでクラッチシューの摩耗状態をチェック。
個人的には、30,000km前後で、クラッチシュー交換を心がけています。
バイクの乗り方次第で、クラッチシューの摩耗度は異なるので、距離よりも自身のバイクのクラッチシューの状態をチェックして判断してください。

クラッチシューが摩耗すると起こる症状
クラッチシューが摩耗してくると、発進時に違和感を感じます。
発進時に「キーッ」「キュッ」といった高い擦れるような音が出る症状。これはクラッチシューが十分に食いつかず、アウター内で滑っている可能性が考えられます。
また、アクセルを開けるとエンジン回転だけが先に上がり、ワンテンポ遅れて車体が動き出すような感覚もあるでしょう。
症状が進むと、発進時にガタガタと震えるクラッチジャダーになることも。原因は、クラッチシューだけでなくクラッチアウター側にもダメージが及んでいる可能性があります。
これらの異音、クラッチジャダー等の不具合は、社外品クラッチシューの精度や個体差によっても、起こり得ます。
- 発進時の異音や違和感は、クラッチシュー摩耗の初期サインになりやすい
- 「キーッ」「キュッ」といった高い音は、滑りが起きている可能性あり
- 回転だけ上がってワンテンポ遅れて動くのも要注意
- 症状が進むとジャダーや振動が出て、アウター側にダメージが及ぶことも
- 距離だけで判断せず、実際に感じる症状を重視することが重要
交換を先延ばしにするとどうなる?
クラッチシューの摩耗や不具合に気づきながらも、そのまま乗り続けてしまうと、トラブルはクラッチシュー単体では済まなくなる可能性があります。
特に影響を受けやすいのがクラッチアウター。
滑った状態で発進を繰り返すと、本来は再利用できたはずのアウターまで交換が必要になることも。
金銭面でも、クラッチシューだけの交換で済んでいれば数千円で収まったものが、アウター交換まで必要になると出費がかさみます。
「まだ走れるから大丈夫」
と問題を先延ばしにせず、異音や違和感に気づいた段階で点検・対応することが、結果的にバイクにも財布にも優しい選択だといえます。
- 滑りや異音を放置すると、クラッチアウターにもダメージが広がる
- 発進時の違和感は「まだ大丈夫」ではなく要注意サイン
- 早めの点検・交換が、結果的に出費を抑えることにつながる
クラッチシュー交換前に準備するもの
クラッチシュー交換をスムーズに進めるためには、作業前の準備がとても重要です。
特に意識したいのが、純正部品を選ぶか、社外品を選ぶかという点。
今回の作業を通して感じたのは
「確実性を取るか、コストを取るか」
で作業の難易度が大きく変わるということでした。
自分で整備することにまだ不安がある方や、失敗したくない方には、加工不要で確実に組める純正クラッチシューを選ぶのが無難。
一方で、社外品は価格が抑えられる反面、個体差や精度の問題で加工作業が発生する可能性があります。
実際、今回使用した社外品(KN企画製)では、そのままでは正常に動作せず、加工が必要になるという結果に。
ただし、補足しておくと、過去にKN企画製クラッチシューを使用した際は、特に問題なく使用できていました。
今回のものは、以前と比べて形状や仕様が変わっていたようで、そのため加工が必要に。
工具や経験がない状態で社外品を選ぶと、作業が止まってしまうリスクもあります。
必要な工具一覧
クラッチシュー交換に必要な工具は、多くはありません。
必ず必要になる工具に加えて、あれば作業はスムーズにおこなえる便利な工具もあわせて紹介します。
■クラッチセンターナットを外すのに使用
■クラッチアウターのナットのトルク管理
■工具セット
■他に必要な工具は下記を参照にしてください。

必要なパーツ
純正は価格はやや高めですが、加工不要で確実に組める安心感があります。
一方、社外品はコストを抑えられる反面、個体差や仕様変更によって調整や加工が必要になる場合もあります。
自分の整備経験に合わせて、選択してください。
■純正クラッチシュー
■社外クラッチシュー
アドレス110(CE47A)クラッチシュー交換手順
ここからは、実際にアドレス110(CE47A)のクラッチシューを交換した手順を、作業の流れに沿って解説していきます。
「自分で整備してみたいが不安がある方」でもイメージしやすいように、注意点やつまずきやすいポイントもあわせて紹介していきます。
① 駆動系ケース(クランクケースカバー)を外す
まずは駆動系ケースを取り外します。
アドレス110(CE47A)の駆動系ケース脱着は、コツさえ押さえれば難しい作業ではありません。
車体はセンタースタンドで安定させてください。ボルトは長さが異なるものが混ざっているため、外した位置が分かるように並べて管理すると、組み付け時に迷わずに済みます。
ケースを外す際は、ゴムハンマーなどで軽く叩きながら、無理にこじらず慎重に進めましょう。固着している場合でも、ドライバーを差し込んでこじるのはNG
※駆動系ケースの詳しい外し方やボルト位置については、別記事で写真付きで解説しています。

② クラッチASSYを取り外す
駆動系ケースを外したら、次はクラッチASSYを取り外します。
インパクトレンチがあれば、楽に作業が行えます。
手工具で作業する場合は、ユニバーサルホルダーやプーリー固定工具を使って、確実に回り止めを行ってください。無理に押さえたり、ドライバーなどを噛ませて回すのは危険です。
ナットを緩める際は工具がしっかり噛んでいることを確認しながら慎重に力をかけましょう。途中で工具が外れると、ケガや部品破損につながる可能性があります。
センターナットが外れたら、クラッチASSYを手前に引き抜きます。
ここで、クラッチアウターの内側に段付きがないか、簡単に状態をチェック。

③ クラッチシューを分解・交換
クラッチASSYを取り外したら、次はクラッチシューを取り外していきます。
まず注意したいのが、クラッチセンターナットを外すときの反発です。ナットを完全に外した瞬間、内部のスプリングの力で部品が一気に動くことがあるため、顔や手を近づけすぎないように注意してください。クラッチホルダーを使用すると、スプリングの反発を抑えられ、安全に作業できます。
ナットを外す前にナットとクラッチ本体の位置関係が分かるよう、マジックなどで印を付けておいてください。印をしておくことで、組み付け時に「外す前と同じ位置」まで締め戻すことができ、外す前と近いトルク感で締め付けやすくなります。トルクレンチが使用しづらいため、目安として有効な方法です。
クラッチシューの摩耗具合や当たり面の状態をよく観察しておきましょう。
あわせて、トルクカムの動きや状態も必ずチェック。スムーズに動くか、引っかかりや異音がないかを確認しておくことで、後のトラブル防止につながります。
新しいクラッチシューを逆手順で組み込んでいきます。この際にもクラッチホルダーがあると作業が楽。センターナットを外す前にチェックした印まで締め込みます。
今回使用したアドレス110(CE47A)のクラッチ社外品(KN企画製)では、そのまま組むと動きが渋く、発進時にキーッと異音が発生。明らかにクラッチの不具合。シューが台座に干渉しており、動きが渋い状態でした。分解してシューをとりだし、前回購入したKN企画のクラッチの台座に移植することで、使用できるようになりました。
④ 清掃し、駆動系カバー(クランクケースカバー)をもとに戻す。
組み付けに入る前に、必ず脱脂・清掃を行います。クラッチ周りやアウター内、クランクケース内に付着した古い粉塵・油分は、ブレーキクリーナーなどでしっかり除去してください。
特に重要なのが、クラッチシュー・クラッチアウター・センターナット周辺の脱脂です。ここに油分が残っていると、発進時の滑りや異音の原因になります。
清掃後は、異物が残っていないことを確認し、駆動系カバー(クランクケースカバー)を元に戻します。ボルトは対角線上に少しずつ締め込み、最後に増し締めすることで、カバーの歪みを防げます。
作業後は、エンジンを始動する前に工具の置き忘れや締め忘れがないかを必ず確認しておきましょう。

クラッチシュー交換後の変化・実走レビュー
実際にクラッチシューを交換すると、どの程度走りが変わるのか。 ここでは、配達で日常的にアドレス110(CE47A)を使っている立場から、実際に走って感じた変化をお伝えします。
発進フィーリングの変化
組み付けと清掃を終え、実際に走り出してまず感じたのは、発進時の違和感がはっきり消えたという点です。
交換前に出ていた「キーッ」という高い異音はなくなり、アクセルを開けた瞬間にスッと前に出る感覚が戻りました。これまで感じていたワンテンポ遅れるような発進もなく、クラッチがしっかりつながっている感触があります。
特に低速域での変化は分かりやすく、信号待ちからの発進や、狭い場所でのUターン時など、細かい操作が必要な場面でも安心して扱えるようになりました。
「音がしない」「滑らない」という当たり前の状態に戻っただけですが、日常的に乗っているからこそ、その違いは想像以上に大きく感じます。
配達・通勤で感じたメリット
配達や通勤といった実用シーンでは、ストップ&ゴーの多さがそのままバイクの乗りやすさに直結します。クラッチシュー交換後は、発進のたびに感じていたストレスがなくなり、走りに余計な気を遣わずに済むようになりました。
特に、荷物を積んだ状態での発進でも、エンジン回転だけが先に上がることがなく、安定して前に出てくれます。これは長時間走る配達では、体力面・精神面の両方で大きなメリットです。
また、発進がスムーズになったことで、無駄にアクセルを開ける場面が減り、結果的に駆動系への負担も軽くなっていると感じています。
毎日使うバイクだからこそ、こうした小さな改善の積み重ねが、疲労の軽減やトラブル予防につながると実感しました。
まとめ|純正を選ぶ安心感と、社外品のリスク
アドレス110(CE47A)のクラッチシュー交換は、工具と手順さえ押さえれば、決して難易度の高い整備ではありません。実際、発進時の異音や滑りといった症状は、クラッチシューを交換することではっきり体感できるレベルで改善します。
一方で、今回の作業を通して強く感じたのは、部品選びの重要性です。社外品は価格面で魅力がある反面、ロットや仕様変更、個体差によっては、そのままでは使えず加工が必要になるケースもあります。今回は、過去に問題なく使えたメーカーの製品であっても、結果的に手間が増えることになりました。
自分で整備することに慣れていない方や、「失敗したくない」「作業を途中で止めたくない」という方には、やはり純正クラッチシューを選ぶ安心感は大きいと感じます。確実に組めて、余計な調整が不要という点は、時間的にも精神的にもメリットです。
とはいえ、社外品がすべて悪いわけではなく、状態を見極めたり、必要に応じて加工できるスキルがあれば、有効な選択肢になる場合もあります。大切なのは、自分の経験値・工具・使い方(配達や通勤など)に合った選択をすることでしょう。
毎日乗るバイクだからこそ、発進の違和感や異音を見逃さず、早めに点検・対応することが、結果的にトラブル防止とコスト削減につながります。この作業記録が、同じような症状で悩んでいる方の参考になれば幸いです。
※本記事で紹介している整備作業はすべて自己責任で行ってください。作業中のケガや車両トラブルについて、当方では責任を負いかねます。
不安がある場合は、無理をせずショップへ依頼する判断も大切です。
