アドレス110に長く乗っていると、避けては通れないのが駆動系のメンテナンス。
「駆動系ケースって、自分で外しても大丈夫なんだろうか…?」
実際にケースを開けるとなると「失敗するかも…」という不安もあるでしょう。
どこから手を付けていいのか、そもそも駆動系ケースがどこにあるのかもわからないかもしれませんね。
しかし、アドレス110(CE47A)の駆動系ケース脱着は、コツさえつかめば初心者でも短時間でできる作業。
ケースを開けられるようになるだけで、ベルト交換・クラッチ点検・トルクカムのグリスアップ・異音の原因チェックなど、整備の幅が一気に広がります。
特に、アドレス110を配達の仕事などで、酷使するライダーにとって、駆動系の状態を自分でチェックできることは「安心を手に入れる」ということ。
走りの調子が悪いときにすぐに、ケースを開けて状態を確認できる整備スキルは、大きな武器になります。
この記事では、駆動系のメンテナンスにおいて、必須となるケースの開け方をポイントとともに、わかりやすく解説してます。
駆動系ケースを開けて行う主な整備

駆動系ケースを開けられるようになると、アドレス110で頻繁に必要になる走りに関するメンテナンスが一気に自分でできるように。
ここでは、ケースを開けておこなう主なメンテナンスをお伝えします。
- 駆動系の点検
- ベルト交換
- ウェイトローラー交換
- クラッチシュー点検・清掃
- トルクカムのグリスアップ
- 異音調査
- オイル滲み確認(クランクシールなど)
1️⃣駆動系の点検
駆動系の点検では、ベルトの摩耗具合、プーリーの状態、クラッチシューの残量などを総合的に確認します。特に走行距離が伸びる配達ライダーは劣化が早いため、定期的にケースを開けて点検することでトラブル防止に。
2️⃣Vベルト交換
アドレス110のようなスクーターのVベルトは消耗品。劣化が進むと加速不良や燃費悪化に。
ひび割れや幅の減少が見られたら早めの交換が必要です。ケースを外せれば、自宅でも短時間で交換できます。

3️⃣ウェイトローラー交換
ウェイトローラーは摩耗すると変速タイミングが狂い、加速がもたつく原因にも。
交換するだけで走りが改善することも多いパーツです。Vベルト交換の際に同時に行っておくのがセオリー。
プーリーを外す必要がありますが、ケース脱着ができれば難しくありません。
4️⃣クラッチシュー点検・清掃
クラッチシューが摩耗したり、内側に汚れが溜まると発進時にジャダー(ガタガタ振動)が発生します。
清掃や軽い面取りを行うだけで改善する場合もあり、ケース脱着できる整備者にはぜひ覚えてほしい作業。
5️⃣トルクカムのグリスアップ
トルクカム内部はグリスが使われており、劣化すると変速フィーリングが悪化したり異音の原因にもなります。定期的に古いグリスを除去し、新たにグリスアップすることで滑らかな加速を維持。
6️⃣異音調査
「カラカラ音がする」「加速するとキュルキュル鳴る」など異音の原因は、駆動系が原因のことが大半。
ケースを開けることで、原因を特定することができる場合があります。
7️⃣オイル滲み確認(クランクシールなど)
駆動系内がオイルで湿っている場合、クランクシャフトのオイルシール劣化の可能性があります。
放置するとベルトが滑る等の走行性能に関するトラブルを引き起こします。
アドレス110(CE47A)駆動系ケースの外し方【手順】

ここからは、実際にアドレス110(CE47A)の駆動系ケースを外す手順を解説していきます。
作業自体は、ボルトを外すことがメインなのでシンプル。
しかしながら、ケースを開けるのがはじめての方は、ボルトの位置や力のかけ方など、戸惑いやすいポイントもあります。
あらかじめ流れを把握しておけば、落ち着いて作業できるはず。
- アドレス110のセンタースタンドをかける
- 駆動系ケースのボルトを外す
1️⃣アドレス110のセンタースタンドをかける
まずはアドレス110のセンタースタンドをしっかりとかけます。
駆動系ケースを外す作業では、まず車体が安定していることが大前提。整備するバイクが不安定だと、転倒するリスクがあります。
センタースタンドを立てる際は、平坦で安定した場所を選び、ハンドルが真っ直ぐになるようにしてからスタンドを踏み込みます。
バイクがグラつきがないことを、しっかり確認。
2️⃣駆動系ケースのボルトを外す

センタースタンドで車体が安定したら、いよいよ駆動系ケースを固定しているボルトを外していきます。アドレス110の駆動系ケースは、すべて8mmボルト
また、ボルトには違う長さのものが混ざっています。「どこのボルトなのか」自身でわかるようにしておきます。
画像左側①のボルトを2本を外すと、ダクトがフリーになるので手前に引き抜きます。
ダクトを外すと奥に1本ボルトがあるので、見落とさないようにしてください。
画像は、実際の駆動系ケースのボルト位置と長さの違いを示したもの。
色分けしている通り、赤→橙→緑→黄の順でボルトが長くなっています。
特にケース奥側やダクトを外した奥にあるボルトは見落としやすいので、必ず確認。
ケース奥側のボルトは少し手が入りにくいため、エクステンションバー等を使用。
3️⃣駆動系ケースカバーを外す

すべてのボルトを外したら、いよいよ駆動系ケースカバー本体を取り外します。
ケースは、2本のノックピン(位置決めピン)やガスケットによって軽く張り付いていることがあります。
特に初めて外す場合はガスケットが固着していて破れやすいため、作業前に新品のガスケットを準備。
まずは両手でケース全体を揺するようにしながら、手前に引き抜くイメージで外していきましょう。
もし固着している場合でも、マイナスドライバーなどを差し込んで無理に外すのはNG
外れないときは、プラスチックハンマー等でケース周囲を軽くコンコンと叩き、振動を与えます。
ケースが外れたら、内側に付着した汚れやオイルの飛び散り具合も軽く確認。
オイルが付着している場合は、オイルシールの劣化など、次の整備につながる重要なヒントになります。
4️⃣駆動系ケース内部の清掃、各メンテナンス

駆動系ケースを外したら、予定していた駆動系の整備(ベルト交換やウェイトローラー交換、クラッチ点検など)を行います。
ケース内部の清掃も行っておきます。内部を清掃するだけでも、バイクの走りがよくなります。
ケース内に溜まった、ベルトの削りカスやホコリをエアーで吹き飛ばしたり、パーツクリーナー、ウェスできれいに清掃。
削りカスやクリーナーの飛散を吸い込まないよう、マスクを着用しましょう。
このタイミングでケース内にオイルが付着していないかも再確認。清掃をしておくことで、次回ケースを開けたときの状態変化にも気づきやすくなります。
固着してケース側やエンジン側に残ってしまったガスケットは、この段階で丁寧に除去。
手で取れない場合は、プラスチック製のスクレーパーなどを使い、アルミ面を傷つけないように少しずつ剥がしていきます。
ガスケットが固く貼り付いている場合は、ハンマーやドライバーの柄などで軽く叩いて振動を与えると、ガスケットが浮いて剥がれやすくなります。
駆動系ケース内の清掃に必要なもの
駆動系ケースカバーを取り付ける
取り付け時は、2本のノックピン位置を意識しながらケースをまっすぐ押し込むのがポイント。無理に叩き込まず、手で均等に力をかけて密着させます。ガスケットにズレや噛み込みがないかも必ず確認。
ボルトは、取り外し時とは逆に対角線を意識しながら仮締め → 本締めの順で締めていきます。
締め付けトルクの目安は10Nmです。
駆動系ケースを外すのに必要な工具とパーツ

アドレス110の駆動系ケース脱着に必要な工具は、基本的に 8mmのソケット
ケース固定ボルトは、すべて8mmとなっています。
ただし、ケースの奥の方にあるボルトが多いので、エクステンションバー が必要。
駆動系ケースを開けるということは、ベルト交換やウェイトローラー交換などの駆動系整備を行うということ。
そのため、ソケット・ラチェット・エクステンションなどが一通りそろった工具セットを最初に購入しておくのがおすすめ。
工具セットは、駆動系整備だけでなく、日々のバイクメンテナンスを支えてくれる心強い相棒になることでしょう。
■駆動系ケースのボルトを適正トルクで締める
まとめ:アドレス110の整備の幅が一気に広がる!駆動系ケース脱着!

アドレス110の駆動系ケース脱着は、一度経験してしまえば決して難しい作業ではありません。
必要な工具も限られており、手順とポイントを押さえれば初心者でも、挑戦しやすい整備。
駆動系ケースを外せるようになると、ベルト交換やウェイトローラー交換、クラッチ点検、トルクカムのグリスアップなど、これまでショップ任せだった整備を自分のペースで行えるようになります。
これは、通勤や仕事で、毎日バイクに乗る人にとって大きなメリット。
また、ケース内の清掃やオイル滲みのチェックを習慣にすることで、トラブルの早期発見にもつながります。少しの手間が、突然の故障や余計な出費を防いでくれます。
※本記事で紹介している整備作業はすべて自己責任で行ってください。作業中のケガや車両トラブルについて、当方では責任を負いかねます。
不安がある場合は、無理をせずショップへ依頼する判断も大切です。
